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神聖かまってちゃんの名曲「ロックンロールは鳴り止まないっ」をモチーフに3組の男女の日常生活が少しずつ変化し、彼らのライブを通して前に一歩踏み出す勇気を持つようになる音楽映画ですが…
死にたいなー
生きたいなー
どっちでもよくなーい
「ロックンロールは鳴り止まないっ」プチレビュー
「劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ」を見終えた直後、
正直ちょっと複雑な気分に見舞われました。
少なくともローテンションのタイミングで見るべき映画ではなかったかな。
ラストのカタルシスはいいんだけど、
それ以上になんだか切なくて苦しくて胸が痛くなったよ。
神聖かまってちゃんとは…
テン年代のカリスマバンドと呼ばれる彼らはニコ動などの動画サイトでありのままの自分たちを晒し、エキセントリックでハプニングまみれのライブも生配信することで2chで話題となって人気が出たバンド。当時はNHKでドキュメンタリーまで放送されました。
「ロックンロールは鳴り止まないっ」とは?
- プロ棋士を夢見る女子高生
- バツイチ寸前のポールダンサー
- メジャーデビュー手前の神聖かまってちゃんのマネージャー
という男女3名が、
彼らのライブ1週間前から本番当日を迎えるまでの日常を描いた作品なんです。
それぞれの場所でそれぞれの日常の中で同じライブの本番当日を迎えるんだけど、
この3組それぞれの置かれてる状況がツライ痛い苦しい切ない。
プロ棋士を夢見る女子高生は厳格な父親に突き放されて家には居場所がなく、
兄は引きこもりという環境。
挙句の果てに彼氏は親友と二股でブチ切れ。
「大学行かないなら自分で金稼げ」ってなんだよ、それ。
貧しいわけではなく、かといって教育にうるさいわけでもなさそうだけど、
こんな父親がいたら家を出たくもなるわな。
ポールダンサーは保育園に通う息子が問題起こして園長から退園勧告され、
昼夜働きづめの疲労も重なって心身ともにフラフラ。
息子にも旦那にも自分自身にもノイローゼ気味にイライラしっぱなし。
神聖かまってちゃんのマネージャーはレーベルのプロデューサーから勝負曲を万人受けする楽曲に改変するように迫られ、
「彼らのやりたい音楽をやらせたい」という想いと、
「メジャーデビューしたらもっと多くの人に聴いてもらえる」という想いの板挟みで、
悶々と頭を掻きむしる日々。
みんな何かにもがき苦しみながら為す術なく、
日々をやり過ごすのがやっと。
「ロックンロールは鳴り止まないっ」の残念なところ
彼らに共通するのが神聖かまってちゃんなんだけど、
この3人の日常がライブに向かって直接的に収束していくわけではないんですよね。
何らかのカタチでつながるんだろうとは思ってたんだけど、
マネージャー以外は直接関係ないんだもん。
保育園に通う息子が起こした問題というのが個人的には実に悩ましい。
音楽の嗜好は人それぞれであっていいはずなんだけど、
保育園児が聴くには神聖かまってちゃんの世界観は確かに強烈だから、
彼の影響で自分の子供まで「死にたいなー」なんて日常的に口にされたら、
モンスターペアレントじゃなくても園児の親は怒鳴りこむわなー。
でも、本人はライブでもノリノリ。
子供は子供なりにボーカル“の子”の言動に何か感じるものがあったんでしょう。
悪いことしたわけでは全然ないのに、
勝手な偏見と大人の都合で子供から大事なものを取り上げるのは理不尽で、
いい気はしないし、音楽が社会悪扱いされるのも気分悪い。
Marilyn Mansonだろうが初音ミクだろうがたこ焼きレインボーだろうが、
どんな音楽を好きになったってええやん。
女子高生だってポールダンサーだってマネージャーだって、
みんな息苦しい日常の中で悩みもがき苦しみながら、
自分なりの“答え”を必死で探してますが、
それらしきものがライブ当日に垣間見えたところで終わり。
でも、それは神聖かまってちゃんのライブだからこそ見えたのではなく、
無我夢中で死に物狂いで目には見えないものを必死で探し続けたからこそ、
彼らの目の前に“何か”がぼんやりと見えたんじゃないかな。
そういう意味で、これがライブである必然性とか、
神聖かまってちゃんである必然性が感じられないところは致命的のように思うんだ。
保育園児がみんなと合唱する「芋虫くん」という曲もなかなか名曲なんだけど、
母親や園長先生までもがそろって感化されるようなライブではないと思うし、
フラれた女子高生がチャリンコで全力疾走しながら聴くには「あるてぃめっとレイザー!」のフルスロットル感は小気味良いんだけど、
そんな曲なら他のバンドにもあるわけで、
つまりは単純にこの作品における彼らの存在意義って何なんだろう?…って思っちゃうワケさ。
表題曲「ロックンロールは鳴り止まないっ」は彼らの代表曲ですが、
同世代の心をガッツリと掴んたのは間違いない。
ラストで3組がつながらないなら、
同時進行のオムニバスみたいなもんだから、
ライブに向けてつながっていくようなイメージとは違ったかな。
だからといって、つまらなかったわけではなく、
3組のエピソードはそれぞれ単発でもそれなりに面白かったから、
1組1組をもっと深く丁寧に掘り下げながらライブにつなげてほしかったわけです。
できれば同じ場所で同じ時間を共有しながら、
彼らの圧倒的で予測不能なライブパフォーマンスから大切な“何か”を見つけてほしかった。
人生だって先が読めないから楽しいわけやん。
引きこもり兄は部屋からは出てこないけど、
ドア越しに将棋を指すところなんてちょっと泣きそうになったし、
保育園児がみんなを集めて合唱するのはエライ。
歌詞の一部分だけ切り取ればショッキングではあるんだけど、
子供なりにがんじがらめに縛られた大人の窮屈さを感じ取ってるんだよ、きっと。
遠くで近くですぐそばで未来を憂いているんだよ、きっと。
そう考えると少し深みが出てきますが、
最後に少しでもこの3組が交錯する場面があればもっと良かったのになー。
神聖かまってちゃんはたまに聴いてましたが、
この年代特有の世界観が僕は好き。
「ロックンロールは鳴り止まないっ」の作品情報
監督:入江悠
タイトル:劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ
製作国:2011年日本
上映時間:89分
公開日:2011年4月2日(土)
出演者:
二階堂ふみ
森下くるみ
宇治清高
三浦由衣
坂本達哉
劔樹人
野間口徹
堀部圭亮
の子(神聖かまってちゃん/ボーカル&ギター)
ちばぎん(神聖かまってちゃん/ベース)
モノ(神聖かまってちゃん/キーボード)
みさこ(神聖かまってちゃん/ドラム)
そして、やっぱ二階堂ふみはすごい。
デビュー当初は「ポスト宮﨑あおい」という評判でしたが、
実はこの「ロックンロールは鳴り止まないっ」が彼女の初主演映画。
TAMA映画賞最優秀新進女優賞ほか、その後も映画賞の常連。
とくに2014年の「私の男」(熊切和嘉監督作品)と、
2012年の「ヒミズ」(園子温監督作品)では国内外で高い評価をされました。
最近では「オオカミ少女と黒王子」のようなメジャー作品から、
「蜜のあわれ」や「ふきげんな過去」といった小規模な作品にも出演し、
2018年は行定勲監督の「リバーズ・エッジ」で主演。
監督の入江悠は「SR サイタマノラッパー」で名を馳せ、その後映画3本ドラマ1本製作されるほどの人気を博したが、「日々ロック」「ジョーカーゲーム」は興行的に大失敗。しかし、今年の「22年目の告白 -私が殺人犯です-」が大ヒット。12月9日には監督オリジナルの最新作「ビジランテ」が公開予定。
「ロックンロールは鳴り止まないっ」のあらすじ
ロックバンド“神聖かまってちゃん”の大規模なライブまで、あと1週間と迫っていたある日。“プロの棋士になる”という今時の高校生とはギャップのある夢に悩んでいた女子高生の美知子(二階堂ふみ)は彼氏から神聖かまってちゃんのライブに誘われる。しかし、その日は自力でのぼりつめたアマ王座決定戦の決勝戦だった。シングルマザーのかおり(森下くるみ)は、昼は清掃業、夜はショーパブダンサーとして昼夜を問わず働きながら、息子・涼太を育てている。神聖かまってちゃんのネット配信に夢中な涼太が保育園で問題を起こし、かおりは園長に呼び出されて厳重注意を受ける。神聖かまってちゃんのマネージャー・ツルギ(劒樹人)はバンドがメジャーデビューするという状況で奔走していた。しかし、新しい上司はバンドの売り出し方について不条理な難題を押し付けてくる。別々の場所で様々な悩みを抱えた男女のくすぶった心に神聖かまってちゃんの歌が届く。すると、彼らの運命は“自分らしい生き方”に向かって一気に動き始める。
(キネマ旬報データベースより引用)
「ロックンロールは鳴り止まないっ」の予告篇
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