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「コンカッション」は実話ゆえに背筋が凍るNFLの闇を暴いた社会派ドラマ(ネタバレ感想)

 

引退したNFL選手に頻発する不可解な死の真相に迫る社会派ドラマ。心不全で死亡した元NFLのスター選手を検死した医師(ウィル・スミス)は彼の死因が頭部への激しいタックルの影響にあると突き止めたが、その報告は全米を揺るがす衝撃的な大論争に発展する…

 

コンカッション=脳震盪

 

 

シーズン中はどこかのスタジアムで毎日のように脳震盪で誰かが倒れ、
担架で運ばれ、あるいはチームメイトに両肩を支えられながらグラウンドを離れ、
そのまま病院送りになることもめずらしくありません。

 

 

相撲で取り組みが始まる瞬間の“立合い”と同じように、
アメリカンフットボールでは1プレーごとにこの立合いがあるようなものなので、
試合中は何度も何度もぶつかり合うボディーコンタクトがあります。

 

 

その中でもラインの選手にとって頭部は最も激しくぶつかる領域。
ピッツバーグ・スティーラーズでセンターとして活躍したマイク・ウェブスターは地元では知らない人はいないくらい超有名で、NFL史上最高のセンターと称賛されて殿堂入りを果たした男なのに、

 

 

50歳を間近にして頭痛や幻聴などを訴え、理解不能な奇行を繰り返し、
挙句は家族にも見捨てられてホームレスになっちゃう。
そして、変死。

 

 

センターとは?

横一列に並んだ攻撃ラインの中心にいるポジションの選手。センターがボールをQBに渡す(スナップする)ことでプレイが始まる。プレイ開始と同時に目の前で向き合う巨漢ぞろいの守備ラインの選手が一斉に突っ込んでくるため、ぶつけ合う頭部のダメージは最も大きいと思われる。

 

 

コンカッション

 

 

 

背筋が凍りつくような実話

 

 

50歳近くでアルツハイマー的な症状が見られるのはおかしいということで、
法医学のエキスパートであるベネット・オマル医師はマイクを解剖するわけですが、

結果はどこにも異常は見当たらない。

それどころか、半年前に撮影したCT画像にも認知症の疑いはない。

 

 

「真実が知りたい」

 

 

疑念を拭い切れないオマル医師は検査を続けるために自ら高額な費用を投じ、
あらゆるアプローチでマイクの脳を精査することで、
未知の疾患の可能性にたどり着くんです。

 

 

人間の脳は外部から60Gの衝撃を受けたら脳震盪を起こすらしい。
ところが、アメリカンフットボールの選手が頭部をぶつけ合う衝撃は100G以上。
背筋が凍るような衝撃が試合中に何度も何度も繰り返されるわけで…

 

 

こんなの、まともじゃない!

 

 

 

コンカッション衝撃

 

 

脳なんてそもそも頭蓋骨の中でプカプカ浮いてるようなもので、
構造的に衝撃を緩和するような緩衝材的役割を果たすものは存在しません。
だからこそ、頭部に激しいタックルを何度も受け続けたら神経障害を引き起こして、

やがて少しずつ精神が蝕まれていくのではないか。

 

 

これがオマル医師が結論づけた新たな発見。
オマル医師によってCTE(chronic traumatic encephalopathy=慢性外傷性脳症)と名付けられました。
つまり、無自覚なまま脳に致命的なダメージをもたらす外傷というわけです。

 

 

でも、ほとんどの選手がそんなこと知りません。
脳震盪なんてアメリカンフットボールでは日常茶飯事で、
一時的に意識が朦朧とするだけで体はしばらくすれば元に戻るから、

 

 

強い衝撃を受けたことで頭がクラクラっとする一過性の症状くらいにしか思ってないもん。
そのくらい脳震盪には慣れっこになっちゃってます。

 

 

実は僕自身、かつてアメリカンフットボールを少しやってましたが、
正面からガツンとぶつかった瞬間の衝撃は一瞬記憶がぶっ飛ぶくらい激しく、
「ここはどこ?」「私は誰?」状態になったこともありました。

 

 

ヘルメットを装着していても気休めくらいなもんで、
でも、なかったらなかったで、それこそ背筋が凍りますわ。

 

 

キツツキのようにくちばしで何度も繰り返しつつく作業をする動物はその衝撃を吸収できるように発達してるけど、人間には頭突きするような習慣がないから、

オマル医師は神が人間にアメリカンフットボールをさせたことは間違いと主張してます。

 

 

 

CTE(慢性外傷性脳症)について

 

 

この疾患の患者は外傷を受けてから数年から数十年経って、記銘力低下、易攻撃性、錯乱、抑うつ状態などの認知症症状を呈する。アルツハイマー病やパーキンソン病などとの鑑別が困難なことが多い。
アメリカンフットボール、アイスホッケー、サッカー、レスリング、野球などの接触の多いスポーツの多くでみられている。
(Wikipediaより引用)

 

 

 

NFLの“闇”を暴いた骨太の社会派ドラマ(ネタバレあり)

 

 

NFLに警鐘を鳴らすために医学雑誌で論文を発表し、
これで危険にさらされる選手の安全を守ることができると考えましたが、
相手は超巨大なスポーツビジネスを仕切るNFL…当然のごとく反発してきました。

 

 

いやー、このあたりからは告発をめぐる社会派ドラマとして面白くなってきますが、
NFLは「因果関係はない」と完全否定。
絶大な権力ででたらめな論文を撤回するように圧力をかけてくるんです。

 

 

だって、もしNFLが因果関係を知っていたら知っていたで大問題で、
選手の生命を左右する重大な真実を組織ぐるみで隠蔽していたことになりますし、
知らなかったら知らなかったで、それもまた大問題。

 

 

そんな論争の渦中でも不可解な死を遂げる元NFL選手は相次ぐし、
オマル医師や恋人のプレマはFBIからも嫌がらせをされ、
それでも信念を曲げないオマル医師は巨大組織と徹底抗戦するしかなくなるんですよね。

 

 

 

コンカッションパートナー

 

 

 

そこに強力な助っ人が現れました。
スティーラーズの元チームドクターであるジュリアン・バイレス。
かつて面倒を見てきた仲間たちが苦しむ姿を見て見ぬふりをすることができなくて協力を申し出てきたのです。

 

 

アメリカンフットボールにもともと興味がないオマル医師とは正反対で、
ずっと内側で仕事をしてきた人間ゆえにキッパリと割り切れない葛藤でもがきながら、
「NFLは形だけの調査委員会で事実を隠蔽していた」と告げるジュリアン。

 

 

これ以上ないくらいのアシストでニューヨークタイムスにも掲載されて大反響を呼び、
ついには脳震盪会議を開催させるところまで持ち込みました。
ジュリアンを演じるアレック・ボールドウィンがなかなか味わい深い。

 

 

 

コンカッション相談

 

 

事故死や自殺した彼らの診断書を見ながら、
オマル医師はいつも署名してるのがジョセフ・マルーンという脳神経外科医であることに気づいたことで、本人に直談判することにしますが、
そこでマルーンの口から出てきたのは医師の言葉というよりビジネス論でした。

 

 

「アメリカの母親の1割がフットボールが危険だと感じたら、フットボールは終わりだ。」
「失業者で溢れるこの街に雇用と莫大な利益をもたらすNFLを終わらせるつもりか」

 

 

お互い主張を譲らず、平行線のまま交じわらず。
感情的に吐き出したオマル医師の「Tell the truth!」は熱かった。

 

 

 

コンカッション vs NFL

 

 

真実って一つしかない…はず。
でも、オマル医師が見つけた症状も真実なら、
週末ごとに2,000万人を熱狂させるNFLが人も街も活気づけるのも真実。

 

 

見方を変えれば何が真実かどうかも分からなくなって、
人気凋落を恐れるNFLが執拗なまでに隠蔽しようとするのも理解できなくはないし、
選手だって事故のリスクを覚悟の上で高額な報酬をもらってるわけだしね。

 

 

そう考えると相撲も将来的には生活習慣病になるかもしれないのに、
体を大きくするためにガッツリ食べてナンボだし、
ボクシングでも網膜剥離とかパンチドランカーになる可能性が高い。

 

 

プロのアスリートはみんな相応のリスクを背負ってるわけで、
その覚悟が真剣勝負を生み、その姿が感動を呼ぶ。

 

 

スポーツが圧倒的に面白いのはそこにある「全力」とか「入魂」といった美しくストイックな精神が選手から伝わってきて、心を揺さぶられるせいじゃないかな。

 

 

 

その後、どうなった?

 

 

脳疾患を抱えるアメリカンフットボールの元選手らが集まって事実隠蔽に対する集団訴訟を起こしました。
NFLは当初から一貫して「引退後の選手が不可解な自殺を遂げることやアルツハイマー的な症状を発症することはアメリカンフットボールと無関係」という主張を頑なに続けてましたが、
2016年3月にCTE(慢性外傷性脳症)が脳震盪に起因してると正式に認めました。
NFLに補償を求めていた集団訴訟でNFL側が推定10億ドル(約1090億円)を支払うという和解案を裁判所が支持。
NFLの元選手ではおよそ6000人、10人中3人前後がアルツハイマー病もしくは認知症を発症する可能性があるとみられている。

 

 

[blogcard url=”http://www.afpbb.com/articles/-/3084418″]

 

 

[speech_bubble type=”rtail” subtype=”L1″ icon=”man1.png” name=”HIRO”]この数字にも背筋が凍ります。[/speech_bubble]

 

 

「コンカッション」の作品情報

 

 

原題:Concussion
原作:ジーン・マリー・ラスカス「コンカッション」
監督:ピーター・ランデスマン
製作:リドリー・スコット
公開日:2016年10月29日(アメリカは2015年12月25日)
上映時間:122分
製作国:2015年アメリカ
配給:キネマ旬報DD
興行収入:3,400万ドル
出演者:
ウィル・スミス(ベネット・オマル/法医学のエキスパート)
アレック・ボールドウィン(ジュリアン・バイレス/元NFLのチームドクター)
デヴィッド・モース(マイク・ウェブスター/元NFLのスター選手)
アルバート・ブルックス(シリル・ウチェット/法医病理学者/オマルの理解者)
ググ・バサ=ロー(プレマ・ムティソ/オマルの恋人)
アーリス・ハワード(ジョセフ・マルーン/脳神経外科医)
アドウェール・アキノエ=アグバエ(デイヴ・デュアソン/元NFL選手)

 

 

オープニング興行収入はウィル・スミス主演作の中ではワーストを記録。

 

 

「コンカッション」のあらすじ

 

 

ベネット・オマル(ウィル・スミス)はナイジェリア移民の優秀な医師。法医学のエキスパートである彼は脳検査に精通し、ペンシルベニア州ピッツバーグで検死官として働いていたが、ある日、地元のNFLチーム“ピッツバーグ・スティーラーズ”のスター選手だったマイク・ウェブスター(デヴィッド・モース)の解剖結果に不可解な点を感じた彼はもっと詳しい検査で精査したところ、新たな疾患としてCTE(慢性外傷性脳症)を発見。それはNFLの選手が頭部に激しい衝撃を受けることで引き起こされる神経障害だったが、医学雑誌で論文を発表した直後からNFLはさまざまな形で撤回するように圧力をかけてきた。因果関係を全面的に否定するNFLと信念を曲げない不屈のオマル。この問題はやがて全米で大騒動に発展していくが…。

 

 

「コンカッション」の予告篇

 

 

[arve url=”https://www.youtube.com/watch?v=7W9WL-PShTs” title=”Concussion motion picture Japanese trailer” description=”Concussion motion picture Japanese trailer” /]

 

 

感想まとめ

 

 

極限まで鍛えたフィジカルと研ぎ澄ましたメンタル。
どんなスポーツでもその頂点を頂くために日々の地道なトレーニングがある。
その過程を知ってるからこそ熱狂するし、興奮する。

 

 

しかし、その裏側には誰にも知られてはいけない“闇”が存在し、

アンタッチャブルな世界ですべてコントロールしてるのがNFLの真実そのもの。
そんな“闇”で見えないNFLの真実を暴いた社会派ドラマ。

 

 

 

映画に登場する実在したNFL選手

 

コンカッションマイク・ウェブスターマイク・ウェブスター

 

1974年~1990年にNFLで活躍した選手。ピッツバーグ・スティーラーズの黄金時代に強靭でハードなコンタクトする名センターとして4度のスーパーボウル制覇に貢献。1997年に殿堂入りを果たす。愛称は鉄人マイク。オマル医師の検死によってCTEが発覚した最初の事例。2002年9月に心臓発作で死亡(享年50歳)

 

 

 

 

 

 

コンカッションデイブ・デュアソン

デイブ・デュアソン

 

1983年~1993年にNFLで活躍した選手。シカゴベアーズでセーフティとしてシーズン最多サックを記録し、ベアーズとジャイアンツでスーパーボウルを2度制覇も果たした名選手。オマル医師には当初否定的だったが、自身がCTEの疑いがある症状を発症したことで、「自分の脳を研究に役立ててほしい」という言葉を残して2011年2月に胸を撃って自殺(享年50歳)
劇中でウォーターズを見捨てたかのように見える演出が家族には不服らしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

コンカッションアンドレ・ウォーターズ

アンドレ・ウォーターズ

1984年~1995年にNFLで活躍した選手。フィラデルフィア・イーグルスでディフェンスの最後の要となるセーフティのスターターを務め、猛烈なタックラーであり積極果敢なヒッターとして相手チームに恐れられた。CTEの疑いからデュアソンに相談するが相手にされなかったことで2006年11月に自殺(享年44歳)

 

 

 

 

[speech_bubble type=”rtail” subtype=”L1″ icon=”man1.png” name=”HIRO”]もちろん、医師も実在します。[/speech_bubble]

 

 

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